ボンさんの話をしよう

ボンさんの話をしよう。唐突だが。想像の話、フィクションです。

当時のバイト先に、同業他社から中途社員として入ってきたのがボンさんだった。年齢は20代後半くらいだったはず。生き方が器用な人だったのか、ボンさんについてはマイナス要素も、プラス要素も、特に話題になることがなく、私はボンさんが自分とわりと近い領域で働きつつも、すっかり存在を忘れて時間を過ごしていた。

ボンさんを思い出したのは、その当時にススキノによく飲みに行っていた先輩から話を聞いたとき。そして、その話を聞いた1時間後くらいには、ボンさんとススキノでお酒を飲んでいた。

いわく、ボンさんはパチスロの才能があるらしく、狙った日にはかなりの確率で大当たりをひくことができるらしい。数万〜数十万円ほどになる儲けは、一切貯金することなくススキノに落としているらしい。「なぜ仕事を辞めないのですか?」と尋ねると、「親を心配させたく無いから」と言う返答。イイ話。その割にいい年こいて実家暮らしなのかコイツ、と思ったのを覚えている。

「ゴチしますよ」と言うボンさんのお言葉に釣られて、このあと私たちは、日常のボン様(これくらいの時から、敬称は「さん」から「様」に変わっていた。)のススキノ遊びに付き合うことになった。

連れて行かれたのはニュークラ、顔パスで通された先はVIPルームだった。ちなみにボン様は一次会でも二次会でも一切アルコールを飲まない。飲んでいるのはコーラ。しかも車でススキノ に来ていた。車種はフィット。

店が相当空いていたらしく、次から次へと女の子がVIPルームに投入されて来るあたりから、我々はボン様の話が幻ではなく、現実なのだとじわじわと実感してきた。それもボン様の狙いだったのだろう。気付けば10名以上の大所帯になっており、男女比では「女」の方が多かったと思う。ここでのあだ名がボン様だったので、ススキノではボン様と呼ばれているそう。理由はボンボンそうな見た目だから。ちょっと笑った。

正直、キャバクラでもニュークラでも喋りたいことなんて何も無い。初対面の探り探りの会話に疲弊するのもバカバカしいな、と私は仲の良かった別の先輩と勝手に2人で喋り出した。内容はとっくに放送が終わっていた大河ドラマ「龍馬伝」。それがまさかの嬢の1人にヒットした。曰く、福山雅治のことが好きで毎週見ていた(そう言えばこういうお店は日曜日お休みだ)のだが、内容が理解できないところが多々あったらしく教えて欲しい、とのことで興味津々状態。質問を受け付けるよ、なんて言ってポイントを稼ぐつもりもない我々は長州征伐の話に絞って勝手にトークしていたのだが、伊勢谷友介も好物だった嬢にはかえってツボにハマったらしく、3人だけやたらうるさい、ボン様グループは意味のない静かな接待トーク、という訳のわからないことになった。

ここでボン様をヨイショしてあげられなかったことについては、素直に反省している(してない)けど、楽しいフリをしなくても、楽しい感じが出せたことには個人的に満足している。それがおごられる側の最低限のマナーというものだから。

ボン様に敬意を表して龍馬伝以外の話もしておくと、パイ姉さんと呼ばれるやたら乳の見せるドレスを来た子が居た。会話の内容は覚えていない、いや、会話はしてみたけど成立しなかった。他の女の子からも会話できないキャラ扱いされてたように思う。以上。

支払いを済ませて3次会のバーに移動した時、ボン様は「みんなが楽しんでくれれば」みたいなことを言っていた。隣にはさっきの店の黒服が座っていた。店に行った時は、必ずこの黒服とアフターをするらしい。

そのバーで聞いた話では、一人で来たときのボン様の遊びのフルコースでは、キャバクラ前にヘルスに行って何もしないことらしい。ただ90分、会話だけ。説教するとかじゃなくて普通の雑談。「怒る子はいないのか?」と尋ねると、いない、と。「私の魅力に勃たねぇのかてめぇゴラ!インポ野郎が!」と激怒する芯の強い、プロフェッショナルな女の子はススキノには居ないらしい。(ボン様が行っていた範囲では)

まあ当然と言っちゃ当然だが、黙ってやることやった方が会話せず済んで楽だろうに、めんどくせーなコイツ、ぐらいに思ってた子は居たのでは(だからその仕事をしている)と思ったけれど、余計なことは言わないでおいた。えらい。

そして、3次会を終えた我々一行は、ボン様の車で家へと送られていった。(私は家も近いし気も乗らないので歩いて帰ったが。)

ボン様のフィットはヘルスの消毒薬の匂いがしたらしい。エロフィットだ!エロフィットだ!と翌日、二日酔いも醒めないくらいで仕事を開始した先輩は喜んでいた。別日にボン様とススキノで再開した際に、私はつい口を滑らして「エロフィット」と言ってしまった。その場では何も言われなかったが、あとでボン様は怒っていたと聞かされる。「車でエロいことをしたことはない」(?)と。私はボン様の集いには誘われなくなった。ここでボン様を立てるようにすかざずフォローをいれた先輩に、「金の力というのは強いのう」としみじみしたのを今でも覚えてる。

ボン様はどうしようもなく寂しかったのだと思う。もしくは黒服に気のあるゲイだった(そしてその人を知って欲しかった)のかもしれない。どうでもいい。

コロナ禍でキャバクラは自粛中、ヘルスは…まあ、やってるかも。でも、スロットは打てないから行く金もない。パチンコ屋も営業自粛中だ。

ボンさんのお話はこれまで。もう10年くらい昔の話になるのか。オチは特にない。

的な昔話を書こうと、noteをはじめてみました。撮影のアイディア、話題のネタになればと、過去の話を書いてみます。

https://note.com/samampe

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