はるる(仮)さんと歩く、坂のまち谷根千

谷根千いいじゃん、的なことを書いて早半年。すっかり放置していた。

「猫のまち」「散歩のまち」「食べ歩きのまち」という商業的でわかりやすいラベルを 「谷根千」 から外していったとき、元々ここには何があったのだろう‥みたいなことを模索する中で、地形に着目してみた。

「基盤地図情報 数値標高モデル 5mメッシュ」(国土地理院) をもとに作成

西日暮里~日暮里間(上の画像では切れているが、右端には鶯谷の駅がある)を見ると山の手線と京浜東北線の線路が、山の手の台地を囲うように敷設されていることがわかる。

ここにこんなに「段差」があったとは、谷中は 「坂のまち」とも呼ばれているが 、平面の地図や航空写真を見ていても、あまり想像ができない。

今回の撮影エリア(「電子国土地図」国土地理院)

でも、「始」~「終」の断面図を見てみると・・。

日暮里~千駄木駅間の断面図(「電子国土地図」国土地理院)

坂だ。ここにはものすごい坂がある。

今回はこの台地を登ったり、下りたりしながら写真を撮ってきた。はるる(仮)さんと。

目的は「かつての東京、江戸ロマンに思いを馳せたいから」ではない。2人とも高いところと坂道が好きだったから、である。

馬鹿と煙は高いところへ上るという言葉があるが、これを真とすれうのならば、おそらく我々は煙なのだろう(「猫」という説もある)。

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地蔵坂

諏訪神社境内から、西日暮里駅方面へと向かう坂道。私にとっては深夜時代の「モヤモヤさまぁ~ず」で谷根千特集のオープニングに使われていた場所、という認識の「坂」である。

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さまぁ~ずの大竹さんは「精○の匂いがする」と言っていた場所だが、匂いは特にしなかった
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諏訪神社の境内から山の手線、京浜東北線の線路を眺める

東京に引っ越して思ったのは、「昔の人は富士山が好きだった」ということで、それくらい「富士」と名の付くものが新旧含めてあちらこちらにある、という印象である。

この「富士見坂」も、私の中では「みんな富士山好きだな~」ジャンルに分類される命名である。都内に同名の坂道は複数あるが、今も富士山が見えるのはここと護国寺の坂だけとか。

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富士見坂から富士山を‥見えなかった
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坂道の「抜け」を上から楽しむ

日暮里駅の改札を出て、谷中銀座商店街の夕焼けだんだんに向かうときに現れる地味ぃ~な上り坂が「御殿坂」。ここを通過するとき、左手には谷中霊園がある。

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谷中霊園のらくだで休む

やがてY字路にぶつかる、「質」の看板が目に付くので、行ったことがある人の頭には今それが思い浮かんでいるだろう。右に行けば夕焼けだんだんで、有名な谷中銀座のゲートもあって映え選手権優勝なのだが、個人的にはここで左を行く道が気になっていた。

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谷中に最初に訪れたときから、気になっていた。(希依 さん)
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その坂道を上から望む
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夕焼けだんだんの脇道ではなく、この「七面坂」の方が歴史のある坂道、らしい

坂道は楽しい。見るの楽しい。登るのも楽しい。だが、ただの「坂道」好きの2人にとって、あまり歴史や江戸情緒にはそこまで深い関心がないもとい、「わ~坂道だ~!」という感動に比べたら、知識を得る悦びは残念ながら些末なことになってしまうのである。

そんなわけで、名前もない路地の緩やかな下り坂へと進んでいく。

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ゆるく下に下っていくのがわかる
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坂を全身でたのしむ。

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写っていないが、私も寝転びながらこれを撮っていた、と思う。

路地裏をあそぶ。

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はるる(仮)さんのこの表情が好きだ
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超観光地の谷中銀座のスタートみたいな場所なので、坂の上から見られることはあったが、通りがかる人はいなかった。もともと静かなまち、路地なのだろう。

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アロエをみつけた
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なぜアロエに笑っているのでしょうか

下町風情あるのまちで、アロエを見つけるのがすきだ。自分が子どもの頃にあったアロエブームを思い出す。植えたはいいが食べることもなく、火傷のときに手に塗る勇気もなく、そのまま忘れられていったアロエがまだ鉢植えになって生き残っている。

アロエに爆笑している理由は「夜のお店のパネルにあるあるの目線の手隠し、アロエバージョンみたいな絵が撮れています!」と自分が言ったからである。どれくらいのヌルさで楽しみながら撮っているかがバレてしまうエピソードだ。(それ以前に人として最低だ。)

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サボテンが落ちていた。
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サボテンとの 緊張 の出会いから打ち解けるまでを演じて下さい、
という無茶ぶりに応え(させられ)る
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猫は完璧なフォルムだーと叫ぶはるる(仮)さん
個人的には はるる(仮)さん が完璧なフォルムだと思っているが、余計なことは言わない

坂道だ、今回のテーマは。時を戻そう。

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ここは蛍坂

昔は蛍が居たんでしょうね~(たぶん)、だから蛍坂っていうんでしょうね~(たぶん)みたいな話をしつつレンズを望遠に切り替えたところで、はるる(仮)さんが唐突に坂道を転がり出した。

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転がるよー、という予告はない
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楽しそう、である
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「私のことはいつでも撮っていいけど、私は私で勝手にやる、突然やる」ということを、ここで体と言葉ではるる(仮)さんより教えられた。

これぞガチンコの写真である。撮るよ~、はーい、なんて写真はマジで生ぬるいのである。また「ローアングルから失礼します」というTwitterのFF外から失礼並に意味のわからない挨拶が存在すると噂に聞く(本当なのか!?)が、そんなことを言いながら撮るものは写真ではないのである。そこにあるから、撮る。居るから、という理由でシャッターを押す。それで良いものが撮れたかどうかで互いを評価し合う、ダメならさようなら、良ければまたね、これこそが「写真」行為なのだ…みたいな話をしたかもしれないし、していないかもしれない。

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真島坂
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通り過ぎるカップルが一旦会話を止めたあと、ややしばらく離れて「あの人たち何!?ウケる~」と。
坂を下る2人の(聞こえてないと思っている)会話を漏れ聞きつつ「あるあるだよね~」と。
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この坂の脇道に、収まりのよい△のスポットを見つけて。はるる(仮)さんを収める。
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坂道は辛いので、坂ごとに女神を建たせましょう、家の格もそれで決まるのです、
という意味のわからない(本当にわからない)架空話をした。
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笑ってくれた。優しい。当たりの女神である。

そんなことを言っている間に、千駄木駅まで到着した。最初の地図の断面図くらいの直線距離を、坂道を上ったり下りたりしながらそこまでやってきた、のである。

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左は谷中、右は千駄木の住居表示

蛇道と呼ばれる、くねくねした道を歩く。 久しぶりに観光客に遭遇したのだが、我々は明らかに浮いてしまっている。

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そうだ、きれいなお花と一緒に撮らないと!と唐突に。
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読書の好きな丸の内の女に見えてきた、という雑な感想にきちんとご対応して頂いちゃった
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とても残念なことに、どんなジョークで笑ってもらえたのか、記憶に残っていない

そして、蛇道を抜けた先にある赤字坂で、はるる(仮)さん劇場がまた唐突に再開した。

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写真上、上から見るショットが多くなりがちだけど
下から見ながら登るのがいいよねー、と道中に何度も会話をした
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奥に見切れる観光客をだいぶ待ったが、なかなか移動しない
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待ちきれずに劇場が開幕する
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このガードパイプに、私も同じ体勢になって撮る
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強く意識はしていないが、撮影中に同じ体勢になることは、大切なことかもしれない

そして三浦坂に辿り着く。

ここはこの日の中でベストオブ坂道だった、と2人の評価が一致する素晴らしい坂道だった。

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伝わるだろうか、奥の急勾配が
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右の塀から伝わる「坂道感」
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坂道はたのしい

この坂を下る御老女に声を掛けられる。聞けば毎日この急勾配を往復しているのだとか。手すりくらいあっても良いですよね~、なんて話をする。「たまには転がりたいですよね!」なんて言葉は言わない。それくらいの常識はあるよね、と自分を鼓舞して錆び付いた常識ある人っぽい言葉を絞り出す会話も、テンション高い今なら楽しめる。

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ドアが開けっぱなしだ
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根津方面に坂を下れば、一気に漂う下町感

三浦坂を下れば今回の旅はおしまいである。

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写真では伝わらないが(冒頭の立体図も参照のこと)、ここはV字地形の谷を道路が走っている。谷中という地名は、「上野の山と駒込の間の谷であることに因る(『江戸と東京の坂』山野勝)」そうだが、上野の山を感じられた坂は今回ここだけであった。

言問通りの直線区間、東大付近~谷中(「電子国土地図」国土地理院)
素腹らしい!上野の山の方が高いようだ。(「電子国土地図」国土地理院)

V字地形、いいよね。だいたい高速道路とかで渋滞の起点になりやすいサグ部っていうマイナスイメージが強いけど、坂道鑑賞の観点からは、上りも下りも楽しめる最高の景色だ。

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谷中1-1

以上、坂のまち、谷中である。

どんな撮影をしようかとお話を伺う中で、はるる(仮)さんは高いところと坂道がお好きだと伺った。そして私の手元にはたまたま何の目的もなく買ってみた東京の坂道の本が届いたばかりだったので、これは運命ではないか、とこじつけて坂道の旅に出かけた。

あまり「ポートレートとは女性の魅力を引き出すことである」「すべての女性を美しく撮る」みたいな話に興味はないのだが、ある人の魅力を引き出したかったり、人となりが知りたければ、その人のテンションが上がる場所で撮影を組むのが良いのではないか‥と、その思い付きを実践してみた。

まだ東京にはたくさんの坂道があるので、高いところ・坂道が好きな方はぜひ旅に出かけましょう。

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