彼氏同伴撮影のすゝめ

「撮影に彼氏を連れてきて良いですか、と聞かれて断るカメラマンは下心がある」というインターネットの御伽噺。定期的にバズる話題だが、いかがだろうか。

私の意見としては、「控えめに言ってアホ」だと思う。きっと写真を撮ったことがない人たち同士、内輪で騒いでいるのだろう。

「撮影の空気を作る」と呼ばれる、限られた時間の中でお互いの信頼関係を構築しつつ、その土台の上で、カメラを操る表現者としての”自分”という存在を写り手に売り込む、言い換えれば、この人なら任せて大丈夫だ、という”安心”を写り手に感じさせる自然な流れにする、というこの行為は、カメラを構えてシャッターを押すという単純行為に比べて格段に難しく、技術よりも感性が問われる。良い”写真行為”が成立するために不可欠な行為であり、写真の本質だと言って良い。確信を持ってそう信じる。

その空気作りの場に「彼氏」という(撮影者にとっては)異質の存在がいたら、この難易度は格段に上昇するのは想像に難くない。その難しさたるや、他人の茶の間に土足で踏み込んで家族丸ごと寄進と入信を迫る新興宗教の勧誘活動の如し(伝わるか)。誰がそんなことを好んでやりたがるのだろうか?

というわけで、やってみた。

model: 人生詰み子さん

まず詰みさんは遅刻した。30分くらい遅刻した。彼氏と私、土地勘もない駅に2人ぼっちである、そもそも顔も知らないのでこの2人は合流もできない。やるな、詰みさん!さすが、詰みさん!詰みさん大好き!!

説明しよう、このキュートな笑顔の先には常に彼氏さんがいらっしゃるのである。

ずっと荷物を持ってくれて、詰みさんを笑顔にしてくれて、撮影が終わったら詰みさんを連れて帰ってご飯を食べさせてくれるのである。ありがとう、彼氏さん!大好き、彼氏さん!その節は、助かりました!!

model: あこさん

次はあこさん。お付き合いの長い恋人さんは、誰もが知る有名人。今年が没後15o年。名を「土方歳三」さんと言う。もちろん、呼び捨てではなくて、土方様と呼ぶあこさん!明らかに他のロケーションよりもテンション上がってるあこさん、かわいい!あこさん、大好き!

恋人さんとの貴重なツーショットシーン。

半端ない無い存在感を放ちつつも無口なのが素晴らしいです、恋人さん!常に存在を感じつつも全く撮影の邪魔をしないのが凄すぎです、恋人さん!正直に言って「龍馬伝」では新撰組より攘夷派に肩入れしてたけれどもそんなことも無言で許してくれて心広すぎですよ、恋人さん!あこさんのとびきりの笑顔を本当にありがとう!

というわけで、彼氏同伴撮影、サイコーである。シャッター押す以外の雑事は全て引き受けてくれて、自分はただ撮ることだけに集中すれば良い。荷物を置き引きされる心配もない。きっと頼めばレフ板とか持ってくれるのだろう、最近使ってないが彼氏さんに持たせて役割を与えるために新しく買っても良いくらいだ。

ただし、そういう撮影は2回目以降が良いのでは、と思う次第である。ここで挙げた例はいずれも初回の撮影の話ではない。

あこさんとの撮影については、私がしつこくあこさんから好みを聞き出して、わざわざ土方さんの生家の近くまで連れ出して撮ったものだ。自然な笑顔を引き出したいと意図するならそこまでやれば良いし、「いや、オレはそういうのやってないんで」という撮影者は断れば良い。

私は「ウソの写真は嫌いだ」とあらゆるところに書いている。ウソではない本当との写真はなんですか、という問いに対する1つの解として、「彼氏同伴撮影」の飛び切りの笑顔写真は「あり」だと思う次第である。

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